本日、私的な用事で朝から行動。
せっかくなので書き留めておく。
用事とは、お墓について。
以前書いたが、今年の春、母が突然亡くなった。
あまりに急なことで我が家では墓など準備しているはずがない。
今のところ、公営の納骨堂という所に遺骨を納めてあるが、
早めに墓に移してやりたいというのが家族の総意。
しかし調べてみると、一般の墓地の金額たるや・・・。
そんな中、地元の公営霊園が、新規区画の入園希望者を募っていると知った。
さっそく申し込んだところ、『132』なる番号と、
指定日に公民館に来るようにと書かれたハガキが届いた。
その指定日が本日。私は朝9時に公民館の大ホールに赴いた。
中に入って軽く驚く。
壇上に『○○霊園・新規墓地抽選発表会』と、大々的な横断幕が張られ、
年末の商店街で見受けられる、ガラガラと回す巨大抽選箱があったのだ。
しかも用意している数名の担当者たちは、妙にテンションが高く、
はりきって、ガラガラを見やすい場所へ移動させたり、戻したりを繰り返している。
だが客席に座る100人近くの入園希望者の温度は当然のことながら低い。
そんな中、司会者がスタンドマイクに向かって、にこやかに切り出した。
「さあ、それではいよいよ、2005年の○○霊園・新規墓地の抽選会をはじめますっ!」
役所の人なのだろうが、妙になれている。
正直、ファンファーレが流れてもおかしくないほど、見事なタイトルコールだった。
その軽妙なコールに促され、ガラガラ担当者が、厳かに巨大抽選箱を回す。
そして出てきた数字の書かれた玉を恭しく司会者に渡した。
司会者は、少々ハウリングを起こしつつ、高らかに言った。
「はい、出ました!76番っ!」
すると書記のような男が
「はーい、76番っ!」
と復唱しながら、ボードに数字を書き込む。
まるで年末ジャンボの抽選のようだ。
だが客はノーリアクション。
おそらく当選している人もいるはず。だが誰も喜ばない。
その理由は参加資格が関係している。
なにせ抽選に参加できるのは、
ここ一年で身内が亡くなり、墓地を探している家族のみ。
民間の墓地のように生前予約などできない。
要するに参加者の誰もがお互い悲しい思いを抱えているだけに、
大喜びするのを控えているのだろう。
つづいてガラガラが回され、
皇帝に捧げるように玉を司会者に渡すガラガラ役人。
「出ました、お次は29番っ!」
「はい!29番!」と甲高い声で復唱する書記役人。
なんでも今回の抽選には30区画の墓地に
200以上の応募があったらしい。
それは近年稀に見る競争率なのだという。
これが彼らの興奮している理由かもしれない。
「はい、来ました、198番っ!198番っ!」「はい!198番!」
玉が出るたび、熱気をおびていく彼ら。
壇上を苦々しい顔でみつめる客たち。
見事なまでのコントラスト。
どんどんハイテンション抽選会はつづき、
次第に決定した数字が書記の手によって埋められていった。
しかし依然として私の番号『132番』はコールされない。
やがて抽選は最後の一区画になった。
そのとき!
ガラガラ・・・
「はい、出ました!ラストは…ひゃくさんじゅう…」
来た!
はじめての130番台!
誰にも見えないように私は手元のハガキを握り締めた!
「131番!ラストの当選は、131番でございまーすっ!」
・・・ハズレ。
「は~い、ラストは131番で~す」
甲高い書記の声を背中に浴びながら、私は会場を後にした。
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なぜ、こんなことを記したか?
別にお役所に文句がいいたいのではない。
おそらく私がこれを客観的に見ていたら、
おもしろくて仕方なかっただろう。
神妙な空気なのに、気付かず、場違いなほど はしゃぐオトナ。
これは、コメディシーンの基本なのだと、
再認識できたことが言いたいだけだ。