カンフー・マッサージ
歯軋りするほど肩がこる。
これは『忙しいアピール』ではなく、完全に運動不足が原因。
さりとて、何の運動をしていいか分からない。
そう言い訳しながら、日々をすごしている
マグロ野郎をソロソロ脱したい。この夏こそは。
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マッサージをしてもらうのが無上の喜びだ。
念のため言っておくが、回春的なアレではない。
正真正銘の整体の事である。
ワタクシはいついかなる時でも
揉みほぐしてもらえるように、よく仕事をする新橋に二軒、
地元に三軒、その他、町々にお気に入りの店がある。
しかし最近になって恐ろしい事態が起きた。
新橋のよく行く場所その①は、
お婆ちゃん整体師が営むマッサージ店である。
そこは旅館にあるような浴衣に着替えて、施術を受ける。
普通の一軒家の二階のような場所で、
風鈴かなんかが鳴っていて、妙に粋だった。
だがなんと最近になって突然、閉店してしまった。
もしやお婆ちゃん整体師に何かあったのか?
何か私に手助けする事はないだろうか?
思い巡らせたものの、お婆ちゃんには
いつもマッサージ中、ずっと背中を向けている。
顔を合わせるのは、お金を払うときのみで、薄ボンヤリとしか覚えてない。
これでは手助けはおろか、そこらへんを歩いていても分からないので無理だ。
しかし、まあ、新橋にはもう一軒、よく行く場所その②がある。
こちらは駅前のニュー新橋ビルの二階にある中国式マッサージ店。
念のため言っておくが「まっさーじイカガデスカ」と
チャイナガールが声をかけきて、ついていくと
三国志の呂布の如し獰猛な女性が出て来るソレではない。
実は、ここにはカンフー映画の大スター・サモハンキンポー似のゴッドハンドがいる。
とにかくサモハン氏のマッサージを初めて受けた時は衝撃を受けた。
施術中『あれ?妙に効くなぁ~』と思い、
どんな手技を使っているのか、そっと見てみたら、
なんとサモハン氏がベッドの横に置いた台に乗って、
自らの体を水平にし、両手の親指に全体重をかけて、
私の背中をぐいぐい押していた。
図で描くとこんな感じである。
まさにカンフーマッサージ!
これが私の怠惰な体にはマッチした。
おまけにこのサモハン氏、人柄も最高。
よくありがちな「マダ凝ってるから、あと10フンやりますか?」
などと言って、1500円を不当に搾取する姑息な技を一切使わない。
さらに日本語をよく勉強しており、日本に永住して、
いつか自分のマッサージ店を日本で開業したいのだという。
この好青年(いくつなのかは知らないけど)のおかげで、
月に一度襲われる眼精疲労と肩こりが激減した。
しかしである。
先週、いつものようにサモハン氏の
カンフーマッサージに予約の連絡を入れた所、
往年の中国人名女優・ノラミャオ似の受付嬢にこう言われた。
「ゴメンナサイ。さもはんサン、チューゴク、カエッチャッタよ」
「なぬ?!」
いや、待て。おそらくビザ的な物だ。
いつ帰ってくるのか聞くと、さらにミャオが言った。
「地震、コワイからカエルて。もう日本コナイって」
こんな所にまで、あの地震の余波が……。
また新たなゴッドハンドを捜さなければ。
皆さん、街で偶然ワタクシに会ったら、
こっそりいい先生紹介してください。